公益社団法人日本臨床細胞学会 理事長 岡本愛光
(東京慈恵会医科大学産婦人科講座)
この度、2023-2024年の公益社団法人日本臨床細胞学会理事長を拝命いたしました岡本愛光です。理事長の就任に際し、皆さまにご挨拶申し上げます。
私は、1989年より国立がんセンター(現国立がん研究センター)研究所でがん細胞を用いた基礎研究をはじめました。早35年の年月が経過しましたが、この間多くの先輩、同輩そして後輩の皆様のお世話になり、2012年に本学会細胞診専門医を取得し、広く細胞診と学会運営を学んできました。
本学会は2013年に公益社団法人化を実現し、公共の利益を担う立場と位置づけられました。そして、この法人化を出発点として名実ともに認められた学術団体へと発展を遂げましたが、それを維持し社会に貢献していく必要があります。本学会を引き続き躍進させるために、明確な将来像を示し、それを実現していくことだと考えました。そのために目指したのは、① 医療の現場を支えること、 ② 積極的な研究活動の支援を行うこと、③ 細胞診に関する情報を発信すること、の3点でした。
まず、①国立研究開発法人国立がん研究センターより「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン更新版」が公開されたことを受けて、前理事長佐藤之俊先生が、会員に対してこの「更新版」の内容に関する声明を公開しました。HPV検査の導入に関し、様々な議論がなされておりますが、今後も学会として医療や社会の状況を注視し必要に応じた発信を行いたいと思います。細胞検査士や細胞診専門医の知識と経験を活かし、より精度の高い子宮がん検診の精度管理を確立したいと思います。つまり、HPV検査や細胞診を用いた精度管理を含めた子宮がん検診プログラム精度管理の資格化を目指したいと思います。さらには細胞検査士の働き方とタスクシフトにも注力したいと思います。
次に、②積極的な研究活動の支援を行うことについては、細胞診分野の研究課題に対する種々の助成を行い、いずれも成果を挙げています。がんゲノム医療の実践に向けたがんゲノムの研究支援は重要だと考えます。具体的には、「がんゲノム診療における細胞診形態の取扱い指針」の作成と公開、特別学術研究として細胞診の学術研究を推進するための支援などを行いました。これらの成果は順次ホームページに公開されており、皆様の活用を期待します。このように学究的研究や調査の活動は本学会や細胞診の将来の基礎となり財産となりますので、今後も継続して支援していきたいと考えます。
そして、③細胞診に関する情報を発信することに関しては、「日本臨床細胞学会雑誌」の内容と電子化された学術雑誌のあり方を見直し,さらに投稿規定やカテゴリー等を検討することによって、投稿数増加や論文の質を高める方策を講じ始めました。2024年4月には公益法人化10周年になりますが、若い方々を対象に細胞診について啓蒙を行いたいと思います。
アフター新型コロナウイルス時代におけるデジタル化、AIなど、医療をめぐる環境は急速に変化しており、将来展望を描くのが一層難しくなっています。こうした時代であっても、日本臨床細胞学会が細胞診を通じて人々の健康維持に貢献し、医学・科学を追及する集団として期待され、発展し続けていくために、皆様と共に進みたいと考えます。本学会の効率的な運営にも注力してまいります。会員そして関連する皆様の益々のご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。
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