理事長就任のご挨拶
公益社団法人日本臨床細胞学会理事長 青木大輔
この度の公益社団法人日本臨床細胞学会理事長就任に際しご挨拶申し上げます。
私は臨床医としてのキャリア開始とほぼ時を同じくして、細胞診の道に入りました。本学会に入会して早や三十年を優に超える月日が経ち、文字通り細胞診断学は私のライフ・ワ-クであり、生活の一部であります。この間、専門分野や職種の垣根を超えて数多くの方々のお世話になり学会の発展を通じて多くを学んで参りました。会員の皆さまに感謝申し上げ、これまで私が培ってきたものを存分に活用して本学会の更なる発展のために尽力する所存でございます。
折しも本学会は公益社団法人化を実現しており、これにより方向性が明確になりました。すなわち本学会は公共の利益を目的とするに値するものと認定され、その任を担う立場と位置づけられました。細胞診を通じてわが国や世界各国の医療・医学に貢献する活動を目指す本学会にとって相応しい肩書であります。
その一方、認定を受けることはゴールではなく、これをスタ-ト地点として名実ともに公益に相応しいものへとなるべく本学会を発展させ、それを維持していく必要があります。私に課された任は、本学会の次なる躍進のための基礎となる、揺るぎない土台作りであり、次のことを目指します。
・本学会および学会員の発する情報や実施活動の透明性・健全性の担保
・本学会会員の積極的な研究活動の支援
・本学会および学会員の社会的認識の再構築
公共を益するという目的からも、また科学の一分野という点からも、私たちが発する情報や活動については透明性や妥当性が厳密に求められます。これまで行われてきたことについての見直し、また新たな課題についての検討について臆することなく実行すべき時期です。それに際して本学会では、公明正大に証拠や情報を集め、国民や社会にどのような影響を与えるかを含めて討議できる、健やかで伸び伸びとした風土を作っていきます。またそのために実施する研究や調査活動に対しては、研究計画、結果解釈の妥当性なども含め大いに支援していきます。さらに日々の業務においても、普段あまり意識せずに行っている細胞診の判定結果やその判定体制が社会にどのような影響を及ぼしているのかという自己認識を、学会のみならず会員諸氏個人個人が改めて考え直す、再構築の時期にもきています。私たちの自己認識とそれに由来する行動により、良くも悪くも、将来の外部からの本学会に対する認識は大きく変わっていくことでしょう。
社会基盤は確実に変化しており、たった10年でも医療を取り巻く情勢は今とは大きく異なっている可能性があります。そのとき私たちの学会が細胞診を通じて人々を益し、科学を追及する集団として期待され発展し続けているために、今日その一歩を皆さまと共に踏み出したいと考えています。
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