ご挨拶

公益社団法人 日本臨床細胞学会細胞診専門医会会長就任にあたって
細胞診専門医会長 植田 政嗣

 この度、平成29年4月1日より、土屋眞一前会長の後を受けて細胞診専門医会会長を拝命いたしました。平成29-30年度の2年間の任期となります。現在本会は、実数2,882 名(認定:細胞診専門医 3,404 名、細胞診専門歯科医 55 名)の専門医を擁する大きな組織となっています。その舵取りをお引き受けし、誠に光栄に存じますとともに、責任の重大さに身の引き締まる思いです。

 日本臨床細胞学会は、1961年に発足した婦人科細胞診談話会にその他の領域のものが加わって発展的に組織されたものです。学会の拡充にともない、細胞診の実務に強い専門医的な資格を作って学会活動の一層の充実を図りたいとの目的から、1968年に細胞診指導医が誕生することになりました。これは、英語のactive memberあるいはfellowを意図したものであって、検鏡の実力があることと学問的研究の先頭に立つことがその条件であるとされました。現在の細胞診専門医や英語のcytopathologistに相当する細胞診断医という名称を採用しなかったのは、後輩の医師や検査技師を検鏡や研究の面で指導し、学会をリードしてゆくという意気込みが強かったからではないかと想像されます。このようにして当初68名が細胞診指導医として認定され、同年広島において第1回の専門医会(その当時は指導医会と呼称)が開催されました。初代の代表世話人に天神美夫先生が就任され、以後、野田起一郎、栗原操寿、信田重光、杉森 甫、野澤志朗、長谷川壽彦、平井康夫、柏村正道、覚道健一、土屋眞一各先生が会長を務められ、私が第12代目の会長となります。この歴史ある細胞診専門医会は「細胞診断実務に関する医師、歯科医師並びに技師の教育・指導に当たること」を目的とし、会長の下に総務、庶務、生涯教育担当、会計、あり方委員会、会報編集委員会が設けられています。細胞診専門医の位置づけは「がんの予防および治療に必要とされる細胞診についての専門的な知識、技術、態度を身につけ、自らが行う臨床実務のみならず、精度管理や細胞検査士等の指導・育成など幅広い活動を通じて国民の福祉に貢献する医師」と規定されています。専門医会の目指す取り組みは専門医の研修、資格認定・更新を通じて社会貢献の出来る優れた専門医を輩出することです。

 専門医認定・更新に関しては、2014年に日本専門医制評価・認定機構を母体として発足した日本専門医機構(2016年に改組)により、現在、基本領域専門医19領域、内科関連サブスペシャリティ専門医13領域、外科関連サブスペシャリティ専門医4領域が既に認定されています。今後は、改組前にすでにサブスペシャリティ専門医として承認済みであった婦人科腫瘍など12領域と、区分未定のサブスペシャリティ専門医46領域の認定作業が行われる予定ですが、日本臨床細胞学会は未承認領域専門医の筆頭に挙げられています。サブスペシャリティ領域専門医は、原則として基本領域専門医を取得した上で、その2階建て部分として認証される資格であります。もとより、日本臨床細胞学会は各科横断的な学術団体であり、細胞診専門医には、病理医、産婦人科医に加えて内科医、外科医、泌尿器科医等も存在しています。細胞診専門医の基本診療領域は、細胞診断学を研修カリキュラムに明記している日本病理学会ならびに日本産科婦人科学会が主体となりますが、他科学会からもその2階建て部分として認証されるべく各方面と調整中です。

 日本専門医機構の指針では、専門医資格更新においても厳密な運用が求められています。専門医資格の更新に際しては、診療に従事していることを示す勤務実態や診療実績の証明、知識や技能・態度が適格であることを証明することが必須であり、ペーパードライバーは決して認めない方向性が打ち出されています。基本的に5年毎の資格更新が想定されており、①診療実績の証明(最大10単位)、②専門医共通講習(最低5単位、最大10単位、このうち3単位は必修講習)、③診療領域別講習(最低20単位、最大45単位)、④学術業績・診療以外の活動実績(最大10単位)の4項目について5年間で合計50単位の取得が必要です。本学会では標記項目に則して、「細胞診専門医資格更新実務に関する施行細則」の改定を行い、本細則は2015年度(平成27年度)以降の細胞診専門医資格認定試験合格者ならびに資格更新者から適用され、2020年度(平成32年度)以降の資格更新時に所定の50単位が更新に必要となります。なお、移行措置として、2016-2019年度(平成28-31年度)における資格更新業務は旧施行細則の下で行います。詳細については、日本臨床細胞学会 細胞診専門医会報(第52号)「新しくなる研修システム」に詳述しているので参照して頂きたいと思います。

 以上のように、細胞診専門医制度も現在大きな曲がり角にさしかかっています。さらに、日本専門医機構の提示する専門医制度整備基準も各学術団体からの要請に応じて少なからず修正されることが予想され、先行き不透明な面があります。いずれにせよ、専門医の先生方におかれましては、細胞診専門医会でのアナウンスやホームページに掲載される最新情報に十分ご留意頂くとともに、今後各学会における医療安全、感染対策、医療倫理講習会や各種教育セミナー等、専門医共通講習や診療領域別講習に該当する出席証明書、学会参加実績などを必ず記録保管し、新研修制度に備えて頂きたいと思います。専門医会でも、細胞診専門医委員会、施設認定制度委員会、教育委員会等と密接に連携を取りながら、この2年間で新たな専門医制度の構築をサポートしていくつもりです。専門医の先生方のご協力をお願いするとともに、ご意見を各種委員会あるいは専門医会ホームページを通じて是非お寄せ頂きたいと思います。