ご挨拶

公益社団法人 日本臨床細胞学会細胞診専門医会会長就任にあたって
細胞診専門医会長 植田 政嗣

この度、2019年4月1日より、引き続き細胞診専門医会会長を拝命いたしました。2019-2020年度の2年間の任期となります。現在本会は、実数2,956 名(認定:細胞診専門医 3,612 名、細胞診専門歯科医 74 名)の専門医を擁する大きな組織となっています。その舵取りをお引き受けし、誠に光栄に存じますとともに、責任の重大さに身の引き締まる思いです。

日本臨床細胞学会は、1961年に発足した婦人科細胞診談話会にその他の領域のものが加わって発展的に組織されたものです。学会の拡充にともない、細胞診の実務に強い専門医的な資格を作って学会活動の一層の充実を図りたいとの目的から、1968年に細胞診指導医が誕生することになりました。これは、英語のactive memberあるいはfellowを意図したものであって、検鏡の実力があることと学問的研究の先頭に立つことがその条件であるとされました。現在の細胞診専門医や英語のcytopathologistに相当する細胞診断医という名称を採用しなかったのは、後輩の医師や検査技師を検鏡や研究の面で指導し、学会をリードしてゆくという意気込みが強かったからではないかと想像されます。このようにして当初68名が細胞診指導医として認定され、同年広島において第1回の専門医会(その当時は指導医会と呼称)が開催されました。初代の代表世話人に天神美夫先生が就任され、以後、野田起一郎、栗原操寿、信田重光、杉森 甫、野澤志朗、長谷川壽彦、平井康夫、柏村正道、覚道健一、土屋眞一各先生が会長を務められ、私が第12代目の会長となります。この歴史ある細胞診専門医会は「細胞診断実務に関する医師、歯科医師並びに技師の教育・指導に当たること」を目的とし、会長の下に総務、庶務、生涯教育担当、会計、あり方委員会、会報編集委員会が設けられています。細胞診専門医の位置づけは「がんの予防および治療に必要とされる細胞診についての専門的な知識、技術、態度を身につけ、自らが行う臨床実務のみならず、精度管理や細胞検査士等の指導・育成など幅広い活動を通じて国民の福祉に貢献する医師」と規定されています。専門医会の目指す取り組みは専門医の研修、資格認定・更新を通じて社会貢献の出来る優れた専門医を輩出することです。

専門医認定・更新に関しては、2014年に日本専門医制評価・認定機構を母体として発足した日本専門医機構(2016年に改組)により、これまでに、基本領域専門医19領域、内科系および外科系の23サブスペシャリティ領域専門医が既に認定されています。細胞診専門医に関しては、現在、同機構からサブスペシャリティー専門医認証に向けてのヒアリングを受けている状況ですが、これまでの経緯については、細胞診専門医会報第52号(2016年発行)ならびに第55号(2019年発行)に詳述しておりますのでご参照下さい。

日本専門医機構の指針では、専門医資格更新においても厳密な運用が求められています。専門医資格の更新に際しては、診療に従事していることを示す勤務実態や診療実績の証明、知識や技能・態度が適格であることを証明することが必須であり、ペーパードライバーは決して認めない方向性が打ち出されています。基本的に5年毎の資格更新が想定されており、①診療実績の証明(最大10単位)、②専門医共通講習(最低5単位、最大10単位、このうち3単位は必修講習)、③診療領域別講習(最低20単位、最大45単位)、④学術業績・診療以外の活動実績(最大10単位)の4項目について5年間で合計50単位の取得が必要です。本学会では標記項目に則して、「細胞診専門医資格更新実務に関する施行細則」の改定を行い、本細則は2015年度以降の細胞診専門医資格認定試験合格者ならびに資格更新者から適用され、2020年度以降の資格更新時に所定の50単位が更新に必要となります。なお、移行措置として、2016-2018年度における資格更新業務は旧施行細則の下で行われてきましたが、2019年は資格更新のない年度となります。

あたらしい研修、資格更新システムでは、専門医が最新の知識や技能を身につけるために必要な講習等を常日頃から受講すること(いわゆる生涯学習)が非常に重視される審査基準となっています。これは、おおむね1時間あたりの講習受講で1単位とされており、多忙な臨床医や大都市圏で開催されることの多い学会やセミナーへの参加が難しい地方在住の勤務医等にとっては非常に厳しい内容となっています。生涯学習には勤務先や自宅でネットを介して受講できるeラーニングも認められており、すでに日本産科婦人科学会等の基本領域学会ではeラーニングシステムが稼働しています。

そこで、本学会においても2016年度から細胞診専門医セミナーや医療安全、感染対策、医療倫理などの共通講習プログラムをDVDに録画し、これらの講演内容をeラーニングとしてweb配信するべく準備を進めてきました。2019年2月より、本会会員専用ページ(マイページ)からリンクするeラーニング学習画面において、細胞診専門医共通および診療領域別講習のeラーニング動画を無料で閲覧できるシステムが稼働し、3月よりeラーニングでの単位取得が可能となっております。動画閲覧後の確認テストに回答後、1つの動画につき、4,000円(税別)のクレジット決済を行うと、動画1コンテンツにつき1単位(新制度)が付与されます。ただし、学習画面に表示されるeラーニング動画の講演を現地で受講し、既に単位が付与されている場合、eラーニングでの単位は認められません。eラーニング受講履歴は学習画面に表示され、一定期間後にマイページの研修履歴にも反映されます。

2020年度には、2015年度資格認定試験合格者ならびに資格更新者を対象に、新たな「細胞診専門医資格更新実務に関する施行細則」の下に、資格更新作業が行われる予定です。更新に必要な50単位中、共通および診療領域別講習単位が重視されており、特に診療領域別講習単位は最低20単位必要、最大45単位まで取得可能となっています。本学会が提供するeラーニングシステムを、知識の習得はもとより、今後の単位取得に向けて積極的に活用して頂けることを期待しております。

以上のように、細胞診専門医制度も現在大きな曲がり角にさしかかっています。さらに、日本専門医機構の提示する専門医制度整備基準も各学術団体からの要請に応じて少なからず修正されることが予想され、先行き不透明な面があります。いずれにせよ、専門医の先生方におかれましては、細胞診専門医会でのアナウンスやホームページに掲載される最新情報に十分ご留意頂くとともに、今後各学会における医療安全、感染対策、医療倫理講習会や各種教育セミナー等、専門医共通講習や診療領域別講習に該当する出席証明書、学会参加実績などを必ず記録保管し、新研修制度に備えて頂きたいと思います。また、ご自身の単位取得状況を十分に検証して頂いた上で、不足単位はeラーニングシステムにより早めに補うようご配慮頂きたいと思います。専門医会でも、細胞診専門医委員会、施設認定制度委員会、教育委員会等と密接に連携を取りながら、この2年間で新たな専門医制度の構築をサポートしていくつもりです。専門医の先生方のご協力をお願いするとともに、ご意見を各種委員会あるいは専門医会ホームページを通じて是非お寄せ頂きたいと思います。